基礎知識

SS400・SPHC・SPCC・SECCの違いと使い分け

SS400・SPHC・SPCC・SECCの違いと使い分け

装置や機械の部品図に「材質:SS400」と書かれている。しかし板厚は1.6mm——このような図面は、製缶板金の現場では珍しくありません。実際には流通しづらい組み合わせで、SPHCやSPCCへの変更が必要になるケースです。

本記事では、製缶板金加工でよく使われる鉄鋼材料SS400・SPHC・SPCC・SECCの4材種について、JIS規格上の位置づけ、適用板厚、表面状態、そして用途に応じた使い分けを解説します。あわせて、図面指示でよく起きる行き違いと、それを避けるための考え方も整理しました。

SS400・SPHC・SPCC・SECCの位置づけ一覧

4つの材種は、いずれも「鉄(普通鋼)」に分類されますが、準拠するJIS規格が異なり、規格が保証している内容そのものが違います。まずは全体像を整理します。

項目SS400SPHCSPCCSECC
JIS規格JIS G 3101
一般構造用圧延鋼材
JIS G 3131
熱間圧延軟鋼板及び鋼帯
JIS G 3141
冷間圧延鋼板及び鋼帯
JIS G 3313
電気亜鉛めっき鋼板及び鋼帯
製造方法熱間圧延熱間圧延冷間圧延冷延鋼板+電気亜鉛めっき
規格が
保証するもの
引張強さ
400〜510N/mm²
引張強さ
270N/mm²以上
主に加工性の区分
(強度規定は緩い)
母材+めっき付着量
適用板厚
(規格上)
板・形鋼・棒鋼など
中厚板〜厚板が中心
1.2〜14mm0.10〜3.2mmめっき前 0.4〜3.2mm
(実際は1.6mm以下が主流)
表面状態黒皮(ミルスケール)黒皮(ミルスケール)平滑・光沢
(通称ミガキ材)
亜鉛めっき面
そのままの
防錆性
なし(要塗装)なし(要塗装)なし(要塗装・めっき)あり(屋内程度)
製缶での
主な用途
架台・フレーム
構造物・タンク
中板のカバー
ブラケット・箱物
薄板の筐体
外観部品
屋内の盤・BOX
内装カバー
最初に押さえたい前提

4材種は「板厚の領域」でおおよそ棲み分けています。ざっくり言えば、t3.2以下の薄板はSPCC・SECC、t1.2〜14の中板はSPHC、それ以上の中厚板〜厚板はSS400という関係です。板厚が決まれば、選べる材質は自ずと絞られます。

SS400|強度が規定された構造用鋼材

JIS規格JIS G 3101(一般構造用圧延鋼材)記号の意味SS=Steel Structure、400=引張強さの下限値(N/mm²)引張強さ400〜510N/mm²成分規定リン(P)・硫黄(S)のみ規定。炭素量の規定はない旧記号SS41(1994年のJIS改正前の呼称)

SS400は、構造物に使う前提で強度が規定された鋼材です。名称の「400」が引張強さの下限値を示しており、強度計算を行う設計では最も基本となる材料です。

特徴的なのは、化学成分の規定がリンと硫黄のみと緩いことです。裏を返せば、引張強さという機械的性質さえ満たしていればよいという規格であり、メーカーやロットによって成分が異なる可能性があります。溶接性や熱処理性を厳密に管理したい場合は、別の鋼種を検討する必要があります。

製缶板金の実務では、架台・フレーム・タンク・構造物といった「荷重を受ける部材」の標準材として使われます。板だけでなく、アングル・チャンネル・平鋼・丸棒といった形鋼類も同じSS400として流通しているため、フレーム構造では材質を統一しやすいという利点もあります。

なお、古い図面では「SS41」と記載されていることがあります。これは1994年のJIS改正前の呼称で、実質的にSS400と同じものと考えて差し支えありません。図面復元の際にもよく遭遇する表記です。

SPHC|熱間圧延の軟鋼板。安価で曲げやすい

JIS規格JIS G 3131(熱間圧延軟鋼板及び鋼帯)記号の意味Steel Plate Hot Commercial(Cは一般用の意)規格内の種類SPHC/SPHD/SPHE/SPHF の4種。SPHCは一般用引張強さ270N/mm²以上適用板厚1.2〜14mm

SPHCは、熱間圧延によって製造された軟らかい鋼板です。冷間圧延の工程を経ないぶん製造工程が少なく、SPCCより安価に入手できます。材料が軟らかいため曲げ加工性に優れ、複雑な形状にも対応しやすい材料です。

一方で、引張強さは270N/mm²以上という規定にとどまるため、強度が求められる構造部材には向きません。コスト削減を目的にSS400からSPHCへ変更する場合は、強度仕様を満たしているかの確認が必須です。

黒皮(ミルスケール)の扱い

熱間圧延された鋼板は、高温の状態で空気に触れることで表面に黒い酸化被膜が生じます。これがミルスケール、通称「黒皮(クロカワ)」です。

黒皮はそのままでは塗装の密着性を損なうため、塗装前にショットブラストや酸洗といった下地処理が必要になります。あらかじめ酸洗を施した「SPHC-P(ピクルド)」という流通形態もあり、下地処理の工程を省略したい場合に選択肢となります。

この下地処理の要否は、そのまま塗装工程のコストに影響します。材質選定は、塗装仕様とセットで検討することをおすすめします。

SPCC|薄板・外観重視のミガキ材

JIS規格JIS G 3141(冷間圧延鋼板及び鋼帯)規格内の種類SPCC/SPCD/SPCE/SPCF/SPCG の5種。SPCCは一般用適用板厚0.10〜3.2mm表面平滑で光沢あり(通称「ミガキ材」「ミガキ鋼板」)

SPCCは常温で圧延された鋼板で、SPHCと比べて寸法精度が高く、表面が滑らかで美しいのが特徴です。炭素含有量が少なく軟らかいため、加工性・成形性にも優れています。

表面が平滑であることは、塗装やめっきの仕上がりに直結します。意匠性が求められる筐体やカバーの外板には、SPCCが選ばれることが一般的です。

注意点

SPCCは表面の酸化被膜を除去した状態で流通するため、防錆油を塗布しないとすぐに錆が発生します。加工後は速やかに塗装やめっきなどの防錆処理を行う必要があり、保管中の錆にも注意が必要です。無処理のまま長期保管する用途には適しません。

また、適用板厚が0.10〜3.2mmであるため、3.2mmを超える板厚ではSPCCという選択肢自体が存在しません。この場合はSPHCまたはSS400を選ぶことになります。これは図面指示の行き違いが起きやすいポイントで、後述します。

SECC|めっき済みで屋内向けの防錆鋼板

JIS規格JIS G 3313(電気亜鉛めっき鋼板及び鋼帯)母材冷間圧延鋼板(SPCC相当)に電気亜鉛めっきを施したもの板厚(めっき前)標準0.4〜3.2mm。実際には1.6mm以下の使用が中心通称ボンデ鋼板(化成処理を施したもの)

SECCは、SPCCの弱点である「錆びやすさ」を解決するために、電気亜鉛めっきを施した鋼板です。あらかじめ防錆処理が済んでいるため、加工後の塗装工程を省略できる点が最大の利点です。制御盤やBOX、装置内部のカバーなど、屋内で使用される部材に広く使われています。

めっき層の厚みが均一で表面の凹凸が少なく、塗装下地としての性能も高いため、塗装する場合でも扱いやすい材料です。

SECCは屋外には向かない

電気亜鉛めっきはめっき層が薄いため、防錆力は屋内使用を想定した水準です。屋外や高湿度環境で使用する場合は、めっき層が厚い溶融亜鉛めっき鋼板(SGCC)を選ぶか、焼付塗装などの塗装で防錆性を確保する必要があります。

製缶で使う際の最大の注意点は「溶接」

溶接時の注意

SECCを溶接すると、表面の亜鉛が高温で気化し、次のような問題が発生します。

  • ブローホール・ピンホールの発生……気化した亜鉛が溶接部に空洞をつくります
  • アークの不安定化とスパッタの増加……溶接品質と外観に影響します
  • 亜鉛ヒュームの発生……人体に有害なため、換気などの作業環境対策が必須です
  • 溶接部の防錆性の喪失……めっき層が失われるため、溶接部からの発錆リスクが残ります

対策として、溶接前にめっき層を部分的に除去する、溶接後にジンクリッチペイント等で補修するといった工程が必要になります。

つまり、SECCは「溶接をあまり伴わない板金部品」に向いた材料です。曲げとねじ止めで構成する箱物やカバーには適していますが、全周溶接を伴う製缶構造物には、SS400やSPHCを使って溶接後に塗装するほうが、品質・コストの両面で有利になる場合が多くあります。

製缶板金における用途別の選び方

ここまでの内容を、実際の製品用途から逆引きできる形で整理します。

用途推奨材質選定の考え方
装置架台・
フレーム
SS400荷重を受ける構造部材のため、引張強さが規定された材料を選ぶ。アングル・チャンネル等の形鋼と材質を統一できる
タンク・水槽・
ホッパー
SS400+塗装
/ステンレス
内容物と使用環境で判断。腐食性のある液体、衛生要求がある場合はステンレスを検討
機械カバー・
安全カバー
SPHC/SPCC強度要求が低く、板厚と外観要求で使い分け。屋外設置なら塗装前提でSPHC
装置外装・
意匠部品
SPCC表面が平滑で塗装仕上がりが良い。焼付塗装との相性がよい
制御盤・
電装BOX(屋内)
SECCめっき済みで塗装省略が可能。ただし溶接部の処理には配慮が必要
屋外設置の
構造物
SS400+焼付塗装
/溶融亜鉛めっき
SECCでは防錆力が不足。塗装またはめっき層の厚い処理を選択
ブラケット・
取付金具
SS400/SPHC板厚と強度要求で判断。t6以上ならSS400が現実的

中厚板領域でSS400が中心になる理由

製缶加工が主に扱うのは、板厚2mm〜16mm程度の中厚板の領域です。この領域では、材質の選択肢は実質的にSS400へ収束していきます。理由は3つあります。

① 板厚の規格上限

SPCCの適用板厚は3.2mmまで、SPHCは14mmまでです。それを超える板厚では、そもそもこれらの規格に該当する材料が存在しません。中厚板から厚板の領域を担うのがSS400です。

② 強度が要求される部材が多い

厚板を使う製品は、装置架台、重量物の受け台、圧力や荷重がかかる構造物など、強度が設計上の要件になっているものがほとんどです。引張強さが規定されていないSPHCでは、設計計算の根拠に使えません。

③ 形鋼との材質統一

フレーム構造では、板材とアングル材・チャンネル材・角パイプを組み合わせることが一般的です。これらの形鋼類もSS400として流通しているため、材質を揃えることで溶接条件の管理が容易になり、材料手配も簡素化できます。

当社の対応材質と板厚

株式会社アガツマでは、以下の材質・板厚に対応しています。

材質対応板厚主な鋼種
鉄最大 t16mmSS400/SPHC/SECC
ステンレス最大 t6mmSUS304/SUS316
アルミ最大 t6mm要ご相談

最大6mクラスの大型製缶品まで、ファイバーレーザー加工機や110tベンダーを用いて自社で加工しています。さらに、3m四方以上の塗装ブースと2m×2m×3mの大型乾燥炉を保有しているため、材質選定から切断・曲げ・溶接・焼付塗装・組立までを一貫して対応できます。

材質の選定は、加工方法・表面処理・使用環境と切り離して決められるものではありません。当社は全工程を自社で行っているからこそ、下流工程まで見通した材質のご提案が可能です。

まとめ|材質選定は「板厚」と「使用環境」から絞り込む

SS400・SPHC・SPCC・SECCは、いずれも鉄(普通鋼)でありながら、準拠するJIS規格も、規格が保証する内容も異なります。選定にあたっては、まず板厚で候補を絞り、次に強度要求と使用環境で決めるという順序が実務的です。

強度が必要な構造部材はSS400、安価で曲げやすい中板部品はSPHC、外観重視の薄板はSPCC、屋内で塗装を省きたい部品はSECC——これが基本形です。ただしSECCは溶接時に亜鉛が気化するため、溶接構造物では慎重な検討が必要です。

株式会社アガツマは、千葉県君津市を拠点に、鉄t16mm・ステンレスt6mmまでの厚中板加工に対応する製缶板金メーカーです。設計から切断・曲げ・溶接・焼付塗装・組立までを自社工場で一貫対応しており、材質の指定がない構想段階からのご相談も承っております。お見積り・ご相談・出張費はすべて無料です。

よくあるご質問

Q SS400とSPHCの違いは何ですか?

A最大の違いは、規格が保証している内容です。SS400(JIS G 3101)は引張強さ400〜510N/mm²が規定された構造用鋼材で、強度計算の根拠に使えます。一方SPHC(JIS G 3131)は引張強さ270N/mm²以上という規定にとどまり、強度よりも加工性と価格を重視した軟鋼板です。強度が必要な架台やフレームにはSS400、強度要求が低く曲げの多い部品にはSPHCが適しています。

Q板厚3.2mmを超える場合、どの材質を選べばよいですか?

ASPCC(JIS G 3141)の適用板厚は0.10〜3.2mmのため、それを超える板厚ではSPCCという選択肢が存在しません。SPHC(1.2〜14mm)またはSS400を選ぶことになります。強度要求があればSS400、コストと加工性を優先するならSPHCが基本的な判断となります。

Q SECCは溶接できますか?

A溶接自体は可能ですが、注意が必要です。表面の亜鉛が高温で気化するため、溶接部にブローホールやピンホールが生じやすく、アークが不安定になりスパッタも増加します。また、亜鉛ヒュームは人体に有害なため換気対策が必須です。溶接部はめっき層が失われるため、防錆性の確保に補修も必要になります。全周溶接を伴う構造物では、SS400やSPHCを使って溶接後に塗装するほうが、品質・コストの両面で有利になる場合が多くあります。

Q黒皮材(SPHC・SS400)に塗装はできますか?

A可能ですが、黒皮(ミルスケール)は塗装の密着性を損なうため、ショットブラストや酸洗といった下地処理が必要です。あらかじめ酸洗を施したSPHC-P(ピクルド)を選ぶことで、この工程を省略できる場合もあります。下地処理の要否は塗装コストに直結するため、材質選定は塗装仕様とあわせてご検討ください。

Q屋外で使用する製品にSECCを使ってもよいですか?

A推奨しません。SECCの電気亜鉛めっきはめっき層が薄く、防錆力は屋内使用を想定した水準です。屋外や高湿度環境では、めっき層が厚い溶融亜鉛めっき鋼板(SGCC)を選ぶか、SS400に焼付塗装を施すといった対応が適しています。沿岸部など塩害のある環境では、ステンレスの採用も検討対象となります。

Q図面に「SS41」と書かれていますが、対応できますか?

A対応可能です。SS41は1994年のJIS改正前の呼称で、現在のSS400と実質的に同じ材料です。古い設備の図面や、長年更新されていない図面でよく見られる表記です。当社では図面が残っていない設備の現物採寸・図面復元にも対応しており、旧規格表記の図面についてもご相談いただけます。

Q材質を指定せずに見積もりを依頼できますか?

A可能です。用途・設置環境・強度要求・外観要求をお伝えいただければ、当社から材質と板厚をご提案します。当社は切断から溶接・塗装までを自社で一貫対応しているため、下流工程まで見通した材質選定が可能です。構想段階やポンチ絵の段階からのご相談も承っております。