基礎知識

焼付塗装とは?特徴や工程、メリット、自然乾燥での塗装との違いを解説します。

製品の耐久性と美観を高める上で欠かせない焼付塗装。本記事では、その基礎知識から実践的な内容までを網羅的に解説します。焼付塗装の定義や種類、そして塗膜を強固にする工程について詳しくご紹介。さらに、自然乾燥の塗装との決定的な違いや、購買担当者が抱えがちな課題についても深掘りします。

製缶加工業でありながら、焼付塗装を内製化している株式会社アガツマが、大型製品の塗装や複数業者への発注といった課題をどのように解決できるのか。高品質な焼付塗装と一貫生産体制で、お客様に提供できる具体的な付加価値を、実際の事例を交えてお伝えします。

焼付塗装とは?

焼付塗装は、塗料を塗布した後、高温の熱で焼き付けて硬化させる塗装方法です。自然乾燥による塗装とは異なり、塗膜の硬度、密着性、耐久性といった物理的・化学的特性が格段に向上するのが最大の特長です。このため、自動車や家電製品、工業機械、建築資材など、高い耐久性や美観が求められる分野で広く採用されています。特に、風雨や紫外線、薬品などの厳しい環境に晒される製品や部品には欠かせない技術です。

焼付塗装の原理は、塗料に含まれる樹脂を高温で化学反応させることにあります。加熱によって塗料分子が結合し、強固なネットワーク構造を形成します。この「架橋反応」と呼ばれるプロセスによって、塗膜は非常に硬く、緻密で、剥がれにくい状態になります。これにより、長期にわたって製品の性能や外観を維持することが可能になるのです。

これにより、製品は長期間にわたり、色褪せや錆の発生を効果的に抑制し、美しい外観と保護性能を維持します。この手法は、特に屋外で使用される部品や、厳しい環境下での使用が想定される部品の防錆・防食対策として非常に有効です。塗膜の優れた密着性は、製品の寿命を延ばし、メンテナンス頻度を減らすことにもつながります。

焼付塗装の種類とそれぞれのメリット・デメリット

焼付塗装には、塗料の違いによっていくつかの種類があり、それぞれが異なる特性を持っています。製品の用途や目的に応じて最適な塗装を選ぶことが重要です。主要な3つの種類と、それぞれのメリット・デメリット紹介します。

種類主な特徴メリットデメリット
メラミン焼付塗装安価で硬度が高い・塗膜が非常に硬く傷に強い
・耐薬品性・耐油性に優れる
・光沢のある美しい仕上がり
・比較的安価
・耐候性が低く屋外使用に不向き
・紫外線で色褪せしやすい
アクリル焼付塗装耐候性に優れる・紫外線に強く屋外でも変色しにくい
・耐食性が高く錆を防ぐ
・鮮やかな発色と光沢
・メラミンより硬度がやや低い
フッ素焼付塗装優れた耐久性と防汚性・極めて高い耐候性で長期使用が可能
・汚れが付着しにくく清掃が容易
・耐薬品性も非常に高い
・他の焼付塗装に比べて高コスト

このように、焼付塗装は使用する塗料によって特性が大きく異なります。製品がどのような環境で使われるか、どのような性能が求められるかを考慮して選定することが、塗装の品質と耐久性を確保する上で不可欠です。

焼付塗装の工程を徹底解説

高品質な焼付塗装は、単に塗料を塗るだけでは実現できません。各工程が塗膜の品質を左右するため、細部にわたる丁寧な作業が不可欠です。

①下地処理

塗装作業に入る前に、製品の表面に付着した油分や汚れ、錆などを完全に除去します。この工程を「脱脂」と呼びます。表面に汚れが残ったままだと、塗料がしっかりと密着せず、塗膜が剥がれやすくなってしまいます。脱脂後、さらに塗料との密着性を高めるために表面を調整する工程を経て、下地が整えられます。この下地処理の質が、焼付塗装の耐久性を決める重要な要素です。

②マスキング

塗装を施さない部分(ねじ穴や嵌合部など)に塗料が付着しないように保護する工程を「マスキング」と呼びます。専用のテープや治具を使用して、塗料がついてはならない部分を精密に覆います。この作業が不十分だと、製品の機能不良や外観の損ないに直結するため、非常に繊細な技術が求められます。

③塗装と焼付

下地処理とマスキングが完了した製品に、塗料を均一に塗布します。塗膜の厚さやムラがないよう、熟練した技術者が丁寧に作業を行います。

塗料が塗布された製品は、その後、乾燥炉に入れて高温で加熱されます。この加熱によって塗料が化学的に硬化し、強靭で均一な塗膜が形成されます。焼付塗装本来の高い性能は、この熱処理工程を経て初めて発揮されるのです。

自然乾燥と焼付塗装の決定的な違い

焼付塗装と自然乾燥の塗装は、単に乾燥方法が違うだけでなく、塗膜の性能に決定的な差を生み出します。特に、購買担当者にとって重要な「耐久性」「品質」「コスト」の観点から、両者の違いを明確に理解しておくことが重要です。

塗膜の強度と耐久性

自然乾燥の塗装は、溶剤が蒸発することで塗膜が形成されるため、塗料本来の性能が十分に発揮されないことがあります。塗膜が柔らかく、物理的な衝撃や摩擦、傷に弱く、剥がれやすいという課題があります。一方、焼付塗装は高温で塗料を化学反応させるため、塗膜が非常に硬く、強靭な分子構造を形成します。これにより、硬度や耐摩耗性、耐衝撃性が格段に向上し、長期にわたる使用でも劣化しにくい優れた耐久性を実現します。

錆止め効果

金属製品の防錆は、塗装の重要な役割の一つです。自然乾燥の塗装では、塗膜の密着性が低いため、湿気や水分が塗膜と金属の間に侵入し、錆が発生するリスクが高まります。焼付塗装は、高温で焼き付けることで塗膜が金属表面に強固に密着し、水分や酸素を遮断するバリア機能が向上します。これにより、優れた防錆効果を発揮し、厳しい環境下でも製品の腐食を効果的に抑制します。

外観品質と仕上がり

自然乾燥の塗装は、乾燥中にホコリが付着したり、塗料の垂れやムラが発生したりする可能性があり、均一で美しい仕上がりを得るのが難しい場合があります。これに対し、焼付塗装はクリーンな環境の乾燥炉内で一気に硬化させるため、ホコリの付着や塗料の垂れが少なく、非常に滑らかで均一な塗膜を実現できます。また、焼付塗装ならではの光沢感や美しい色合いは、製品の外観品質を大きく高めます。

焼付塗装でよくある課題と解決のポイント

焼付塗装は多くのメリットを持つ一方で、購買担当者が直面しやすい課題も存在します。これらの課題を事前に把握することが、プロジェクト成功の鍵となります。

大型製品の塗装難易度

大型の構造物や部品は、一般的な塗装業者の設備では対応が難しい場合があります。特に、3メートルを超えるような大型製品の場合、対応できる業者は限られます。製品を分割して塗装すると、工程が複雑化し、コスト増や納期遅延の原因となります。また、分割塗装では、品質にムラが生じるリスクも無視できません。

複数業者への発注による管理工数とコスト

設計から加工、そして塗装までを複数の業者に依頼すると、購買担当者の管理工数が著しく増加します。各業者との納期調整、品質管理、輸送手配など、多くの手間と時間がかかります。さらに、工程間での輸送コストが発生し、トータルコストが膨らむ要因にもなります。万が一、不具合が発生した場合、どの工程で問題が生じたか原因究明が困難になるリスクも伴います。

これらの課題を解決するためには、焼付塗装に対応できる設備を保有し、さらに複数の工程を一貫して請け負うことができる企業を選定することが、コスト削減と品質向上に繋がる重要なポイントとなります。

製缶加工の焼付塗装を行う当社の特徴

長年にわたり、様々な業界のお客様の課題に向き合ってきたからこそ、お客様の抱える課題を解決に導くための独自の強みがあります。

3mクラスの大型製品に対応可能な塗装設備

一般的な塗装業者では対応が難しい、3mを超えるような大型の製品でも、当社は高品質な焼付塗装が可能です。当社の2m×2m×3mの大型乾燥炉は、近隣地域でも有数の希少な設備です。この設備があることで、大型製品を分割することなく、一気に焼付塗装を行うことができます。これにより、分割による塗装の継ぎ目や品質のばらつきを防ぎ、均一で美しい仕上がりを実現します。また、分割輸送や複数回にわたる工程が不要になるため、お客様の輸送コストや管理工数を大幅に削減し、納期短縮にも貢献します。

設計・製缶板金加工から塗装までの一貫対応

当社は、設計・製缶板金加工から溶接、そして焼付塗装までを社内で一貫して行う体制を構築しています。これにより、各工程で発生しうる課題を事前に洗い出し、解決策を講じることが可能です。例えば、塗装工程での不具合を防ぐために、設計段階から塗料の乗りやすい形状を提案したり、歪みを考慮した製缶加工を行ったりします。外注では困難な、工程間の密な連携によって、最終製品の品質を飛躍的に高めることができます。お客様は、複数の業者とやり取りする手間から解放され、コスト削減と納期短縮、そして何よりも安心して製品の製作を任せることができるのです。

焼付塗装での製品事例をご紹介!

架台部品
焼付塗装 架台部品

本製品は、水や洗剤を使用する場面に特化した架台に使用される部品です。材質はSS400で、意匠性と耐久性に優れた青色の焼付塗装が施されています。青色の焼付塗装により、製品に高い意匠性を付与しています。また、焼付塗装による強固な塗膜が、水や洗剤の浸食から部品を保護し、長期にわたる耐久性を実現します。

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遮熱用パネル
遮熱用パネル

工場の作業環境改善に向け、建物の天井や外壁を覆う遮熱パネルの製作をご依頼いただきました。本製品は、内部に断熱材を内蔵することで高い遮熱効果を発揮し、工場内の温度上昇を抑制することを目的としています。特に、外壁にも設置されるため、単なる遮熱効果だけでなく、優れた耐久性、防錆性、そして外観品質が求められる案件でした。

お客様のご要望に応じ、製作いたしました。特に屋外使用の過酷な環境を考慮し、焼付塗装を施すことで優れ耐候性、防錆性、そして高品質な外観を実現しております。。

製缶品の焼付塗装のことなら千葉・房総 製缶板金加工.comにお任せください

焼付塗装は、製品の耐久性、耐候性、耐薬品性、そして美観を飛躍的に向上させるために不可欠な技術です。適切な塗料の種類を選び、正確な工程と素材ごとの注意点を理解し、ニーズに合った業者を選ぶことが重要となります。

「千葉・房総 製缶板金加工.com」を運営する株式会社アガツマは、大型製缶品の一貫対応から高品質な焼付塗装まで、お客様の多様なニーズに応える技術力と対応力を兼ね備えています。焼付塗装に関するご相談は、ぜひお気軽にお問い合わせください。