基礎知識

溶融亜鉛めっきと焼付塗装の違い|防錆方法の選び方とJIS改正

溶融亜鉛めっきと焼付塗装の違い

屋外に設置する装置架台や構造物の防錆方法として、まず選択肢に挙がるのが溶融亜鉛めっき(ドブ漬け)と焼付塗装です。どちらも実績のある工法ですが、錆を防ぐ仕組みそのものが根本的に異なります。本記事では防食メカ

ニズムの違いから環境別の使い分け、2021年に改正されたJIS H 8641(HDZ→HDZT)、そして設計段階で必ず押さえるべき制約までを整理します。

錆を防ぐ仕組みが根本的に違う

溶融亜鉛めっき= 犠牲防食+バリア

鉄より腐食しやすい亜鉛で表面を覆います。亜鉛層が鉄を遮断すると同時に、傷がついて鉄が露出しても、周囲の亜鉛が先に腐食して鉄を守ります。これが犠牲防食です。

焼付塗装= バリア(遮断)

塗膜で鉄を水分・酸素から遮断します。塗膜が健全なうちは高い防錆性を発揮しますが、傷がついて鉄が露出すると、その一点から錆が進行します。自己修復はありません。

この違いは、実際の運用場面で決定的な差になります。屋外の架台にボルトを締めた際の擦り傷、搬入時の打痕、経年による小さな欠け——焼付塗装ではこうした傷が発錆の起点となり、塗膜の下へ錆が広がっていきます(塗膜下腐食)。一方、溶融亜鉛めっきでは小さな傷であれば周囲の亜鉛が犠牲となり、鉄を守り続けます。

逆に言えば、傷がつきにくい環境や、定期的なメンテナンスが可能な設備であれば、焼付塗装の弱点は問題になりにくいということでもあります。

特性比較と使用環境別の選び方

項目溶融亜鉛めっき焼付塗装
防食原理犠牲防食+バリアバリア(遮断)
傷への耐性小さな傷は周囲の亜鉛が保護傷から発錆・塗膜下腐食
色・外観銀白色のみ。指定不可色番号を指定可能
耐薬品性酸・アルカリに弱い塗料の選定で対応可能
熱による歪み高温浸漬のため歪みやすい影響は限定的
設計上の制約空気抜き穴・湯抜き穴が必須特になし
製缶工程との関係専門業者への外注が前提設備があれば自社完結が可能
使用環境・条件推奨判断の根拠
屋内の装置架台焼付塗装腐食要因が少なく、めっきは過剰
屋外・意匠性を
求めない構造物
溶融亜鉛めっき犠牲防食で長期メンテナンスフリーが期待できる
屋外・色指定あり焼付塗装めっきでは色を指定できない
薬品を扱う設備焼付塗装/ステンレス亜鉛は酸・アルカリに弱い
寸法精度が
要求される製品
焼付塗装高温浸漬による歪みを避けられる
沿岸部・塩害環境めっき+塗装/ステンレス単独処理では不十分な場合がある
判断の起点

まず「色や外観の指定が必要か」を確認してください。YESであれば溶融亜鉛めっきは選択肢から外れます。NOであれば次に「メンテナンスができる環境か」を考えます。定期的な塗り替えが困難な場所ほど、犠牲防食が働くめっきの価値が高まります。

JIS H 8641の改正|HDZからHDZTへ

溶融亜鉛めっきの品質はJIS H 8641に規定されています。

2021年12月20日にJISが改正されました

めっきの種類を表す記号が「HDZ」から「HDZT」へ変更され、品質基準も付着量(g/㎡)から膜厚(µm)へ変更されました。従来の「1種」「2種」の区分も廃止されています。古い図面や社内標準は旧記号のままのケースが多いため、新規図面の作成時はご注意ください。

新記号膜厚(µm)旧記号旧付着量(g/㎡)適用例(参考)
HDZT3535以上HDZ A(1種A)—厚さ5mm以下の素材、たれ切りをするもの等
HDZT4242以上HDZ B(1種B)—厚さ5mm超の素材、たれ切りをするもの等
HDZT4949以上HDZ 35(2種35)350以上厚さ1mm以上の素材
HDZT5656以上HDZ 40(2種40)400以上厚さ2mm以上の素材
HDZT6363以上HDZ 45(2種45)450以上厚さ3mm以上の素材
HDZT7070以上HDZ 50(2種50)500以上厚さ5mm以上の素材
HDZT7777以上HDZ 55(2種55)550以上厚さ6mm以上の素材

※ 適用例に示す厚さは公称寸法によります。膜厚と付着量の換算は、めっき皮膜の密度を7.2g/cm³として算出されています。板厚6mm未満の素材にHDZT77を適用する場合は、事前にめっき加工業者への確認が必要です。

設計上のポイントは、素材の板厚によって適用できる膜厚が決まるという点です。薄い板に厚い膜厚を要求しても、規定の膜厚が付かない、あるいは過剰付着によって皮膜が剥離するといった問題が生じます。

めっきを選ぶ前に確認すべき3つの制約

① 空気抜き穴・湯抜き穴が必須

設計段階でしか対応できない、最も重要な制約です。溶融亜鉛めっきは製品を高温の亜鉛浴に浸漬するため、密閉された中空構造があると内部の空気が急激に膨張し、破裂する危険があります。内部に入った亜鉛や前処理の薬液が抜けず、重量増や品質不良の原因にもなります。角パイプを組んだフレームや箱状の構造では、設計段階で穴の位置と大きさを計画しておく必要があります。

② 高温浸漬による熱歪み

溶融亜鉛浴は400℃を大きく超える高温です。製缶品は溶接によって内部に応力を抱えているため、そこへ高温をかければ応力が解放されて変形します。薄板や細長い部材、寸法精度を要求される装置架台では、この点が実務上の障害になることがあります。

③ 色と外観は指定できない

仕上がりは銀白色のみで、色の指定はできません。さらに、合金層が表面に露出して灰色を呈する「やけ」、保管中の結露などで生じる「白さび」、亜鉛の結晶が模様状に現れる「スパングル」といった外観のばらつきが生じます。いずれも規格上、耐食性にはほとんど影響しないとされ、これらを理由に合否を判定してはならないと定められています。装置の外装として意匠性が求められる部位では、この点が問題になることがあります。

当社の焼付塗装対応

項目対応範囲
塗装ブース3m四方以上
大型乾燥炉2m × 2m × 3m
塗装方法溶剤焼付塗装ほか
対応工程設計・材料手配・切断・曲げ・溶接・塗装・組立・発送まで自社完結

大型製缶品は、塗装設備に入りきらないという理由で塗装を外注されることが少なくありません。その場合、往復の輸送費と中間マージン、工程間の待ち時間が発生します。さらに、塗装後の製品を運搬する際の打痕や擦り傷は、そのまま防錆性能の欠陥となります。

株式会社アガツマは大型の塗装ブースと乾燥炉を自社で保有しているため、大型製缶品であっても溶接から塗装までを社内で完結できます。工程間の輸送がないため傷のリスクがなく、「下地処理が悪いのか、塗装が悪いのか」という責任の所在も生じません。

当社の焼付塗装での製品事例をご紹介

架台部品
焼付塗装 架台部品

本製品は、水や洗剤を使用する場面に特化した架台に使用される部品です。材質はSS400で、意匠性と耐久性に優れた青色の焼付塗装が施されています。青色の焼付塗装により、製品に高い意匠性を付与しています。また、焼付塗装による強固な塗膜が、水や洗剤の浸食から部品を保護し、長期にわたる耐久性を実現します。

遮熱用パネル
遮熱用パネル

工場の作業環境改善に向け、建物の天井や外壁を覆う遮熱パネルの製作をご依頼いただきました。本製品は、内部に断熱材を内蔵することで高い遮熱効果を発揮し、工場内の温度上昇を抑制することを目的としています。特に、外壁にも設置されるため、単なる遮熱効果だけでなく、優れた耐久性、防錆性、そして外観品質が求められる案件でした。

お客様のご要望に応じ、製作いたしました。特に屋外使用の過酷な環境を考慮し、焼付塗装を施すことで優れ耐候性、防錆性、そして高品質な外観を実現しております。。

インテリア金具(焼付塗装)
インテリア金具

こちらはインテリア(椅子)に用いられる金具です。レーザーにて切り出し、ザグリ加工を行った後黒色の焼付塗装をしております。焼付塗装にて塗装することで、意匠性が高まります。

製缶品の焼付塗装のことなら千葉・房総 製缶板金加工.comにお任せください

焼付塗装は、製品の耐久性、耐候性、耐薬品性、そして美観を飛躍的に向上させるために不可欠な技術です。適切な塗料の種類を選び、正確な工程と素材ごとの注意点を理解し、ニーズに合った業者を選ぶことが重要となります。

「千葉・房総 製缶板金加工.com」を運営する株式会社アガツマは、大型製缶品の一貫対応から高品質な焼付塗装まで、お客様の多様なニーズに応える技術力と対応力を兼ね備えています。焼付塗装に関するご相談は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

>>>お問い合わせはこちら!

よくあるご質問

Q溶融亜鉛めっきと焼付塗装、どちらが錆びにくいですか?

A条件によって異なります。溶融亜鉛めっきは犠牲防食が働くため、傷がついても周囲の亜鉛が鉄を守り続け、メンテナンスが難しい屋外構造物では有利です。一方、焼付塗装は塗膜のバリアで防錆するため傷から錆が進行しますが、酸やアルカリに弱い亜鉛より薬品環境には適しています。使用環境と傷のつきやすさから判断してください。

Q図面に「HDZ55」と書かれていますが、現在も使えますか?

A2021年12月20日のJIS H 8641改正により、旧記号HDZ55は新記号HDZT77(膜厚77µm以上)へ移行しました。旧規格では付着量550g/㎡以上として規定されていたものです。既存図面の記載が直ちに無効になるわけではありませんが、新規図面では新記号での指定が適切です。旧記号の図面についても当社で読み替えを行いますのでご相談ください。

Qめっきをする製品に穴が必要と言われましたが、なぜですか?

A空気抜き穴・湯抜き穴と呼ばれるもので、密閉された中空構造がある製品には必須です。高温の亜鉛浴に浸漬した際、内部の空気が急激に膨張して破裂する危険があるほか、内部に入った亜鉛や薬液が抜けず品質不良の原因にもなります。角パイプを組んだフレームや箱状の構造では、設計段階で穴の位置と大きさを計画しておく必要があります。

Q溶融亜鉛めっきで色を指定できますか?

Aできません。仕上がりは銀白色のみで、やけによる灰色の濃淡、保管中に生じる白さび、スパングルと呼ばれる結晶模様などが現れます。これらは規格上、耐食性にほとんど影響しないとされ、外観を理由に合否判定してはならないと定められています。色や外観の指定が必要な場合は、焼付塗装、またはめっき後に塗装を施す重防食仕様をご検討ください。

Qめっきの上から塗装することはできますか?

A可能です。重防食仕様と呼ばれ、犠牲防食と塗膜バリアの両方が働くため、沿岸部や長期メンテナンスが困難な場所に適しています。色の指定もできます。ただし亜鉛めっき面は塗料が密着しにくいため、適切な下地処理とめっき面対応の下塗り塗料の選定が不可欠です。工程が増えるぶんコストと納期も増加します。