基礎知識
モーターカバー製作時の材質選定のポイント

モーターカバーは、回転体や発熱するモーター本体を「異物・接触・粉塵・水分などから守る」役割を担う部品です。一見シンプルな箱状・覆い状の部品ですが、どの材質を選ぶかによって、防錆性・放熱性・強度・重量・コスト、そして製作のしやすさまでが大きく変わります。当社では、図面どおりに加工するだけでなく、設計段階から材質選定のご相談をいただくことも多く、その経験のなかで「最初に材質の方向性を決めておくと、後工程の手戻りが少なくなる」と実感しています。
本記事では、モーターカバーの材質を選ぶ際に押さえておきたい評価の視点と、鉄・ステンレス・アルミなど主要材質の特徴、環境・用途別の考え方を、製缶板金加工の現場目線で整理してご紹介します。
なぜモーターカバーは材質選定が重要なのか
モーターカバーに求められる機能は、設置環境によって優先順位が入れ替わります。屋内の装置であれば「コストと加工性」、屋外や水まわりであれば「防錆・耐食性」、発熱の大きいモーターであれば「放熱を妨げない設計と材質」が前面に出てきます。つまり、材質選定とは「何から、どんな環境で守るのか」を整理する作業そのものといえます。
ここを曖昧にしたまま製作を進めると、「屋外で使ったら早期に錆びてしまった」「思ったより重く、取り付け作業に手間がかかった」「放熱が足りずモーターに熱がこもった」といった不具合につながりかねません。逆に、最初に評価の軸を押さえておけば、過剰な仕様によるコスト増や、性能不足による作り直しを避けやすくなります。
材質選定で押さえたい7つの評価軸
具体的な材質を比較する前に、まずは次の評価軸でカバーに求める条件を整理することをおすすめします。すべてを満たす万能材はないため、何を優先するかを決めることが選定の出発点になります。
- 使用環境:屋内か屋外か。温度・湿度、粉塵・油・薬品・塩害の有無。
- 耐熱性・放熱性:モーターの発熱に耐えられるか。カバーが放熱を妨げないか。
- 防錆・耐食性:屋外や水まわり、薬品雰囲気では最優先になりやすい項目。
- 強度・剛性・耐衝撃性:外部からの衝撃や振動からどこまで保護するか。
- 重量:軽量化と取り付け作業性。装置全体の可搬性にも影響します。
- 電気的特性:感電防止のための絶縁性や、ノイズ対策としての電磁シールド性の要否。
- 加工性・コスト:必要な板厚・形状を、求める数量・納期・予算で実現できるか。
モーターカバーに使われる主な材質と特徴
ここからは、モーターカバーで採用されることの多い材質を、特徴とともに整理します。当社では特に、鉄系・ステンレスの中厚板を用いた製缶板金加工を得意としています。
| 材質 | 主な強み | 留意点 | 向いている用途 |
|---|---|---|---|
| 鉄系(SS400・SPHC・SECC) | 安価・高強度・加工しやすい | 無処理では錆びる(塗装・めっき前提)/比較的重い | 屋内・コスト重視の汎用カバー、強度が必要な大型カバー |
| ステンレス(SUS304・SUS316) | 耐食性が高く堅牢 | 重い・材料費が高め・加工に手間がかかる | 屋外・水まわり・薬品や塩害のある環境 |
| アルミ(A5052 など) | 軽量・放熱性が良い・ある程度の耐食性 | 鉄より強度が低い・コストは中程度 | 軽量化や放熱を重視する場面 |
鉄系(SS400・SPHC・SECC):コストと強度のバランスに優れた定番
鉄系の鋼材は、コストの安さと強度・剛性の高さを両立できる、モーターカバーの定番材です。一般構造用圧延鋼材のSS400や、熱間圧延のSPHCは、中厚板の大型カバーや強度を求められる部位に適しています。電気亜鉛めっき鋼板のSECCは、あらかじめ軽度の防錆性を備えているため、屋内のカバー類で扱いやすい材料です。
最大の弱点は「錆」です。無処理のままでは腐食が進むため、屋外や湿気のある環境では塗装・めっきなどの表面処理とセットで考えることが前提になります。当社では、設計から製缶板金加工、溶接、塗装、組立、発送までを社内で一貫対応しており、2024年稼働の新工場には大型製缶品にも対応する塗装設備(バッチ式ブース・焼付塗装炉)を備えています。素材選定から防錆まで含めてまとめてご相談いただけます。
ステンレス(SUS304・SUS316):耐食性を最優先する環境に
屋外や水まわり、薬品・塩害のある環境では、耐食性の高いステンレスが有力な選択肢になります。SUS304は汎用性が高く、SUS316はさらに耐食性を高めたグレードで、より厳しい腐食環境に向いています。塗装に頼らずに耐食性を確保できる点が大きな利点ですが、その分、材料費が高く、重量や加工の難易度も上がるため、本当に必要な環境かを見極めて採用することが、コストと性能の両立につながります。
アルミ(A5052 など):軽量化・放熱を重視する場面に
アルミは、軽量で放熱性に優れ、ある程度の耐食性も備えた材質です。可搬性を高めたい場合や、モーターの放熱を助けたい場合に検討されます。一方で、鋼材に比べて強度面では劣るため、大きな衝撃や高い剛性が求められる用途では、板厚や構造での補強を併せて考える必要があります。
環境・用途別の材質選定の考え方
評価軸と材質の特徴を踏まえると、選定の「当たりの付け方」は次のように整理できます。あくまで目安ですが、迷ったときの出発点としてご活用ください。
- 屋内・コスト重視:鉄系(SS400・SPHC+塗装、またはSECC)が第一候補。
- 屋外・腐食環境(水まわり・薬品・塩害):ステンレス(SUS304/SUS316)、または鉄+しっかりした表面処理。
- 軽量化・放熱を重視:アルミを検討。強度は構造で補う前提で。
- 大型・高強度が必要:中厚板の鉄系を製缶板金で成形。剛性と保護性能を確保。
材質と同じくらい「設計」と「加工」も効いてくる
モーターカバーの性能は、材質だけで決まるわけではありません。特に発熱の大きいモーターでは、材質をどれだけ吟味しても、放熱を妨げる密閉構造では熱がこもってしまいます。放熱用の開口やルーバーの配置、点検性を考えたフタや分割の構造、振動に耐えるための板厚・補強の取り方など、設計と加工の工夫が仕上がりを左右します。
当社では、こうした「材質・形状・加工方法」を一体で考える進め方を大切にしています。板厚2mm〜16mmの中厚板加工に対応し、4m×4mやW5m×L10m、最大6mといった大型製缶品の実績も豊富です。ファイバーレーザー加工機や80t・110tベンダー、シャーリング、ロール曲げなど多様な設備を備えているため、必要な強度・形状・サイズに合わせた最適な作り方をご提案できます。ラフな段階の図面でも、3D CADで精密な製品図に仕上げ、実現可能な形へ最適化してご提案することが可能です。
モーターカバー製作実績をご紹介!
アルミ縞板製 モーターカバー

本製品の最大の特長は、前面から天面にかけて滑らかに連続する大型のアール(R)曲げ加工です。当社の技術者がベンダーにて、図面通りのR曲げを行っており、縞目の美しさを損なうことなく、設計通りの正確なアール形状を形作りました。
また、本製品はアルミ製です。アルミの溶接は一般的には困難で避けられがちですが、アガツマでは、熱影響をピンポイントに抑えることができる最新鋭のファイバーレーザー溶接機を導入しており、アルミ特有の強固な酸化皮膜を効率的に破りながら、歪みや割れを極限まで抑えた強固で美しい溶接接合を実現しています。
バンドソーのモーターカバーの更新
モーターカバー 【搬送装置向け】

搬送する装置のモーターカバーです。仮組みしたうえで納品させていただきました。レーザー加工機で、2.0㎜のステンレス板材を、特定の形状にカットしたのち、ロール曲げ、ベンダーによる加工部品と溶接を行い、製作いたしました。取り付け位置と組み立てる際のピッチが合っているかに注意して組立を行いました。
千葉・房総 製缶板金加工COMを運営するアガツマの特徴
アガツマは、最新の溶接技術に加え、大型製缶板金のプロフェッショナルとして以下の強みを備えています。
最大6mの大型サイズ・厚中板への対応力
最大6,000mm(6m)クラスの大型製缶に対応する圧倒的な設備力を保有しています 。過去には4m×4mやW5m×L10mといった特大サイズの製作実績も豊富です 。板厚に関しても、鉄(SS400等)は最大16.0mm、ステンレスやアルミは6.0mmまでの厚中板加工が可能であり、最新鋭のファイバーレーザー加工機や110tベンダーを駆使して高精度に仕上げます 。
「ポンチ絵」からの具現化サポート
詳細な図面がない段階からの「具現化サポート」も大きな強みです 。手書きのラフスケッチ(ポンチ絵)や現場写真、あるいは老朽化して図面の残っていない現物からでも、当社の技術者が3D CADを用いて精密な製作図面を作成します 。設計段階から製造現場の知見を活かしたVE/VA提案を行うことで、ムダを省いたコストダウンや品質向上を実現する「最適化設計」を提供します 。
一貫生産体制による短納期
設計・切断・曲げ・溶接・組立までを自社で完結させる「一貫生産体制」により、驚異的な短納期を実現します。アルミ以外の材質であれば、自社での塗装まで対応可能です。外注を挟まないことで業者間の輸送によるタイムロスや製品への傷・打痕リスクを排除し、千葉県内であれば最短で「当日電話発注・当日製作・翌日納品」という圧倒的なスピード対応が可能です 。
モーターカバー製作なら当社にお任せください!
当社は、千葉・房総エリアを拠点に、厚中板・大型の製缶板金加工を手がけています。鉄(SS400・SPHC・SECC)やステンレス(SUS304・SUS316)など、用途に応じた材質での製作が可能です。設計から製缶板金加工、溶接、塗装、組立、発送までを社内で一貫対応しているため、材質選定から納品まで窓口ひとつでお任せいただけます。納入は千葉・東京・神奈川・埼玉を中心に、その他の地域もご相談に応じます。
「この環境ではどの材質が適しているか」「既存のカバーを作り直したい」「廃番・図面のない部品を再製作したい」といったご相談も歓迎しています。まずはお気軽にお問い合わせください。
